イタリア中部から北部にかけては、川流域の豊かな平野で軟質小麦がとれます。
タリオリーニは、その小麦粉と卵、塩、オリーブオイルなどでつくられるのです。
形は幅1~3ミリほどの細いロングパスタ、“切る”という言葉をイタリア語ではタリアーレTagliare といいますが、タリオリーニはそれが語源であることがわかります。
食べると噛みごたえがあり、ソースとのからみもよく、細くてのど越しがよいのが特長です。
タリオリーニは、主に北イタリアでつくられています。代表はピエモンテ州。様々なソースに合いますが、牧草地に恵まれて牛や豚の飼育で知られる地方で生まれたパスタですから、当然土地の産物には良く合います。
バターや生クリームやチーズの入った、リッチでなめらかなソースによくからみます。
また、ピエモンテ州の語源であるPiedi di monte は“山の麓”という意味を持ち、その名の通り、山の幸、森の幸、野の幸に恵まれ、タリオリーニはその産物にもよく合います。
秋にあると白トリュフ、ポルチーニ茸など木の子類と一緒に食べることもできます。
その他、寒い中、仕事を終えて帰宅した農夫たちがタリオリーニを浮き身としたスープを飲んで、体を温める風景も北イタリアらしいものですね。
現在タリオリーニには、魚介類などとさらりとした軽いソースを合わせることも多いようです。
これはタリオリーニの細くて何にでもからみやすい特長と、麺の主張が強すぎずに素材とソースを引き立てる良さが、生まれているのではないでしょうか。
ピエモンテ州の南にはリグーリア州があり、過去にシチリア州、サルデーニャ州ともに行き来があったことから、ツナ、アンチョビ、カラスミなどを使った料理があるのも特長で、それらとタリオリーニが組み合わさっても、間違っていないと思います。
イカスミを練り込んだタリオリーニに魚介のソースを合わせた料理もありますね。
もうひとつ、はずせないソースがあります。
シンプルトマトソースのタリオリーニ、またトマトソース、バジリコの葉、モッツァレッラチーズ、パルミジャーノチーズにからめたタリオリーニです。
乾麺のスパゲティに合わせることが多いこのソースも、噛みごたえを出した生地のタリオリーニに合わせても、えもいわれぬおいしいパスタに出来上がります。
いろいろなソースでタリオリーニを食べてきましたが、やっぱりこれが最高!と思ってしまうかもしれません。
最後に伝統的なものを紹介したいと思っています。
ピエモンテ州アルバ地方ランゲのタリオリーニです。
ここでは、タリオリーニのことを方言でタヤリンTajarinと呼んでいます。
生地に卵黄を沢山使っているのが特長です。卵黄たっぷりなので、きれいな黄色をしています。
一本一本がきれいにはずれ、しかもしっかりとしていて、パサつきがなく、のどを通りやすい仕上がりです。
全卵を使ったものに比べて、味にコクを感じます。
お肉と香味野菜、香草を赤ワインで時間かけてじっくりと煮込み、そのお肉の煮込みをメインディッシュとして食し、残ったこの煮込みソースとタヤリンをからめるのが伝統的な食べ方のようです。
スペシャル料理もあります。
軽めのバターソースにタヤリンをからめて、目の前で白トリュフを削ってかける白トリュフのタヤリンは、とても贅沢なご馳走パスタですね。
今回は、当店でもよく登場するタリオリーニの奥深さを紹介しました。
今後も一緒にいろいろなパスタを楽しんでください